2014年4月27日日曜日

「アナと雪の女王」の歴史的大ヒットを振り返る。(前編)

配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン 
©2013 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.  disney.jp/ANAYUKI/

「アナと雪の女王」の快進撃がとまらない。興行収入は公開37日で100億円を突破し、ディズニー史上最速の記録を樹立。2014年4月23日時点で111億円を突破し、洋画アニメ史上最大のヒット作になっています。

これまでの日本の洋画アニメの記録は、2003年の『ファインディング・ニモ』の110億円。2014年3月14日(金)の公開以降、化物じみた興行が、今なお続いています。

最終興収もディズニー配給作品No.1の『アルマゲドン』(135億円・1998年)の突破は確実視され、『アバター』(156億円・2009年)超えの可能性も十分に見込めます。
GWにどこまで伸ばせるか〜次第でしょう。

映画に関わる人間の端くれとして、この作品の宣伝とヒットプロセスにはとても学びが多く、きちんと振り返りと内省をしたく、ブログ内で前後半に渡ってまとめたいと思います。

前半である今回は、アナ雪がどんなヒットをしているのかを、結果(興行成績)の部分から捉え後半はどんな風にそれが作られていったのか、宣伝の文脈で捉えていきたいと思います。


●そもそも興行収入100億ってどのくらい凄いの?

20億=すごい!
40億=かなりすごい!
60億=めちゃくちゃすごい!
80億=やばい!
100億=お祭り!


独断と偏見にまみれていますが、とってもざっくりに、こんなイメージではないでしょうか。


日本国内歴代洋画興行収入ランキング 1位 - 100位(映画ランキングドットコム引用)


まず、日本の映画業界自体が一昔前とは大きく異なり、洋画実写は20億超えれば大ヒットというのが、現在のマーケット感です。

最近の洋画実写で当たった作品と言えば、12年『レ・ミゼラブル』の61億、『テッド』の41億、13年『ゼロ・グラビティ』の31億などが記憶に新しい所。


音楽市場で100万枚というハードルがそれほど高くない時代があったように、映画も100億作突破品が年間で連発する時代がありました。けど、今は明らかに違います。

20億という数字は、一般成人の劇場に足を運ぶ回数が1.14回という日本において、マーケットの限界値に感じられます。


これ以上売り伸ばすには、通常映画に足を運ばない人達を取り込む必要があり、ある意味でその作品は、"映画を超えること”が求められます。

興収30億〜以上となれば、単純に見ても10億分(70万〜80万人動員)が、普段映画館に来ない客層を巻き込むことになります。

そうした普段映画館に行かない人達が劇場に流れはじめると、少しずつ、作品の社会現象化が始まります。簡単に書いてしまっていますが、数ある映画作品の中で、そこに至ることは容易くありません。

そんな市況の中で、新作洋画アニメの『アナと雪の女王』が大ヒットで生み出しているエネルギーは、歴史的に見ても明らかに異常な熱量といえます。

正直、僕なんかじゃ言葉にする表現が見つからないくらい、どえらいことが、今まさに起こっています。


配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン 
©2013 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.  disney.jp/ANAYUKI/

全世界興行収入では歴代6位にランクイン。14年の全世界的なトレンドとなっています。

【全世界歴代興行収入記録】
(※4月21日、BOX OFFICE MOJO調べ)

1位「アバター(27億8230万ドル)
2位「タイタニック(21億8540万ドル)
3位「アベンジャーズ(15億1180万ドル)
4位「ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2(13億4150万ドル)
5位「アイアンマン3(12億1543万ドル)
6位「アナと雪の女王」(11億2917万ドル)
7位「トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン(11億2370万ドル)
8位「ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還(11億1990万ドル)
9位「007 スカイフォール(11億860万ドル)
10位「ダークナイト ライジング(10億8440万ドル)



●37日で100億ってどれくらい早いの??


配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン 
©2013 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.  disney.jp/ANAYUKI/

タイタニック』80日、『アバター』50日、『アリス・イン・ワンダーランド』38日間、『ファインディング・ニモ』44日という中でアナ雪のそれは、歴代100億作品の中でもかなりのハイペースです。

劇場としては当然、新作が次々封切られる中で、いつまでも人が入らない作品を、自分達の箱でかけておくわけにはいきません。通常は、どんどん新作に差し替えてしまいます。

アナ雪の恐ろしい所は、公開以来、土日に稼ぐ興行収入が、全くと言っていいほど落ちない所にあります。


1週目(金土日)9億8000万
2週目(土日)8億7226万9400円
3週目(土日)8億8100万円
4週目(土日)8億5091万1950円
5週目(土日)8億4025万8550円
6週目(土日)8億2678万1000円(04.27時点)


ちょっと、見た事が無い興行です(笑)

作品のポテンシャルやヒットの仕方、公開タイミング(春休み/GW/夏休み)等にもよるため、一概には言えませんが、公開土日に4億かせげば、それは素晴らしい成績です。20億を狙える数字と言えるでしょう。

10億目標作品で、公開土日2億など行けば、こちらもまた十分、それを狙える数字です。
40億〜を狙う作品となると、公開土日で6億は行かないと、辛い感じでしょうか。(※これら、あくまで僕の私見に基づくものです)

アナ雪は1日あたり2.7億ずつ売り上げる計算となりますから、本当に恐ろしい大ヒットです。


配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン 
©2013 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.  disney.jp/ANAYUKI/

アナ雪の37日100億というスピード突破には、この”興行の落ちなさ”が、大きなポイントになっています。

アナ雪は公開1ヶ月弱という非常に短い期間の中で、リピート鑑賞をしている人が多く、
さらにはそのリピーターを生成し続けています。字幕と日本語で見る〜という複数回鑑賞者が、この作品に関しては非常に多く存在します。

公開1週目に映画を見た鑑賞者が、2週目にリピーター(A)となり、さらに2週目には話題の映画〜と聞き込んで巻き込まれた層が加わり、その新規層の一部が3週目にはリピーター(B)となる。

また、最初のリピーター(A)も、その中のコアな人達は、3、4回と更にリピートする。

こうした雪だるま式の落ちない興行が、ぐるんぐるんと回り続けていることが、今のアナ雪ヒットに予測できます。

また観たくても満席で空きがない、2、3週かかってようやく観れた〜という声も多く、
この辺りも持続的な興行を意図せず作っているでしょう。

配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン 
©2013 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.  disney.jp/ANAYUKI/

新作として公開し、まだ1ヶ月少しか走っていないにも関わらず、接触した人間を次々と虜にし、ファンを生成し続けているという、恐ろしい引きの強さを見せつけているのが『アナと雪の女王』です。

また120億、130億越えのニュースが、1週間毎に世の中を走って行くことだと思います。

後半の次回は、この大ヒットにどうやってたどり着いたのか、より宣伝的なアプローチについて、まとめてみたいと思います。(そっちのが、ブログの内容的には本編となります)

0 件のコメント: