2013年1月6日日曜日

音楽をジブンゴト化する【共創】事例_(前編)


音楽プロモーションにおいて、マスメディア的コミュニケーションは効果を生み出せなくなってきています。「曲は→聴かせる、PVは→見せる」という一方的な【浴びせる発想】は早々に捨て、曲を気にかけもらうには、話題にしてもらうには、好きになってもらう為には、どんなコンテンツ・クリエイティブを提供すればいいのか。

その施策でリスナーの【体験(経験)価値】をどのように向上させ、楽曲・アーテイストへの【ジブンゴト化】を生み出すことができるか。

マスメディア的な文脈で「(アーティスト名)!(タイトル)!(発売日!)オンセール!」と他人事の情報を一方的に浴びせても、基本的にはノイズでしかなく、ファン以外の生活者に好意は抱いてもらえません。そう前回のブログでは書きました。




音楽の「ジブンゴト化」を促すには、楽曲(プロモーション)を通じた【経験価値の向上】が必要不可欠です。

※ 経験価値とは、モノ・コト・バショに関する経験から感じた価値(=楽しかった、面白かった、快適だった、感動した)のことです。プラスの経験価値が大きいほど、対象となるモノ・コト・バショへの愛着は深まり、その経験を誰かに伝えたい欲求が高まる、と言われています。

一番分かりやすく経験価値が引き上げられるのは、やはりアーティストのパフォーマンスをリアルに味わう“ライブ体験”と言えるでしょう。現状、これ以上に身体性を伴う音楽体験はありません。とはいえ、ファンでもないリスナーが、知らない・興味無いアーティストのライブへ足を運ぶというのも、中々ハードルがあります。

ライブという接触形態ではないにしろ、音楽案件のプロモーションではその情報に接れた者が、【何か】を体験し、経験が引きあげられる必要があります。

音楽の「ジブンゴト化」を生み出すには、いくつかのポイントがあります。今回は、そのうちの一つを事例とともにご紹介したいと思います。




case.1 共創(co‐creation





今回、ブログでご紹介するのは【共創体験】によるジブンゴト化です。ここでの【共創】とは、アーティストの音楽表現、或は音楽活動の一部にリスナー自身が組み込まれる、という意味を指します。



〈事例1〉

映像表現の中にユーザーが組み込まれる、

インタラクティブミュージックビデオ。


■SOUR / MIRROR(映し鏡)


まずは体験してもらうのが一番早いでしょう。(※少々面倒かもしれませんが、Twitter、Facebook、Webカメラ、接続するほど感動が増しますので、全ての接続をオススメします)

特設サイトで自分のTwitterやFacebookのIDを連携させ、Webカメラと接続設定。「Play」をクリックするとGoogleのトップページが現れます。検索窓には自分の名前が入っており、そのままWeb検索、画像検索する様子が流れます。

色んなサイトを横断したり、小さいウィンドウがたくさん出て混ざったり、とにかく技術がすごいです。Twitter・Facebook・Webカメラと連携したインタラクティブなミュージックビデオを楽しむことができます。(※対応ブラウザは「safari」と「Google Chrome」のみ)

映像演出の中に自分と、自分のソーシャルグラフ上の知人が出てくる体験はとても面白く、参加された方は“経験が引き上げられた”のではないでしょうか。デジタル上で、まさに視聴者が音楽表現の一部としてMVに参加できてしまう事例です。



〈事例2〉

相手に音楽を届ける、ミュージックビデオゲーム。


■androp/Bell



SOURのMIRROR(映し鏡)の事例よりは、幾分ユーザーに能動的な操作を求められはしますが、こちらもユーザーが音楽表現に組み込まれる事例です。

ユーザーはtwitterと連動したサイトにアクセス。届けたい相手とメッセージを決めたら、そのメッセージが犬やウサギに変身。相手ユーザーを目指して走り出します。(※動物が走っている画面中、ずっとandropの楽曲bellが流れています)

ユーザーは動物をキー操作することができ、迫りくる様々な障害をよけながらゴール(メッセージの到着)を目指します。極力ダメージを負わずにゴールできれば、メッセージはきちんと読める形で相手に届きます。(※余談ですが、伊藤はゲームセンスが無いため、数回挑戦してもノーダメージでクリアすることはできまでんでした)

メッセージを受け取った相手は、自分にメッセージが届けられた過程(MV)を再生できるとともに、ほかの友達にまたメッセージを送ることができます。

ゲームという身体性、友人にメッセージを届けるという行為により、androp/Bellを通じた音楽体験は、よりユーザーの中に強く残る“体験”となるのではないでしょうか。




〈事例3〉
ファンとバンドが一体となって表現をつくる、

コールドプレイのインタラクティブなLEDライブ。


■coldplay/Charlie Brown

   


今度はリアルな音楽表現にユーザーが参加する事例です。英国出身の人気ロックバンドColdplay (コールドプレイ)は、2012年夏にリリースしたアルバム「Mylo Xyloto (マイロ・ザイロト)」のプロモーションのため、世界ツアーを行いました。彼らは、ファンがバンドと一体になってライブを楽しめる、インタラクティブな音楽体験を提供しています。



    

アーティスとの奏でる音楽とファンが一体となったこの光景には、ただただ圧巻です。この演出の仕掛けは、ライブ参加者全員に無料で配布された、「Xylobands」というリストバンドにあります。





様々なカラーのLEDで発光するこのXylobandsは、専用のソフトウェアを使うことで、ライトアップするタイミングとパターンを信号で制御することができます。(会場での制御範囲は約300メートルとのこと)

この機能により、一定時間発光・点滅するだけの従来のサイリウムではなし得なかった、曲に合わせた発光演出が可能となり、ファンとのリアルな音楽表現の共創を実現させています。結果、この演出は多くの来場者が経験価値を大きく向上させたことでしょう。



さらにこの特別な体験は、ファン自らコールドプレイの特設サイト上に共有することができ、“参加者の感動”がそこでは集約されます。よりライブ(アーティスト)のジブンゴトが促進される環境が整えられた好例と言えます。




以上、音楽のジブンゴト化を促進する【共創】事例(前編)でした。3つの事例は、より各論的な【音楽表現】としての共創事例です。後編は、もう少し大きな視点で、アーティストの音楽活動そのものにユーザーが大きく組み込まれた共創事例などもご紹介できればと思います。最後までご覧頂き、ありがとうございました。



               音楽をジブンゴト化する【共創】(後編)に続く

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